健康診断の結果を見て「クレアチニン値が少し高い」と指摘され、最近始めたホットヨガが原因ではないかと不安になっていませんか?健康のために始めたのに、かえって体に負担をかけているのかもしれないと考えると、心配になりますよね。
その数値の上昇は、多くの場合、腎臓病の始まりではなく、ホットヨガによる「脱水」が原因の一時的なものです。
この記事では、腎臓内科医の視点から、その漠然とした不安を「自己管理できる自信」に変えるための具体的な『安全実践チェックリスト』をご紹介します。読み終える頃には、なぜ数値が上がったのかを理解し、次のレッスンから何をすべきかが明確になっています。
この記事の監修者
佐藤 健一(さとう けんいち)
腎臓内科専門医 / スポーツドクター
日本腎臓学会認定専門医。地域の大学病院に勤務する傍ら、プロアスリートチームのメディカルサポートにも従事。腎機能と生活習慣、特に運動との関係性を専門とし、患者一人ひとりのライフスタイルに合わせた無理のない治療と予防指導を信条としている。
この記事は、腎臓内科専門医の監修に基づき作成されています。
なぜ?ホットヨガでクレアチニン値が上がる「見かけの」カラクリ

私の外来には、多くの患者さんから「先生、運動を頑張ったらクレアチニン値が上がってしまったのですが、大丈夫でしょうか?」というご相談が寄せられます。健康のために良かれと思ってしたことで、かえって心配な結果が出てしまうと、混乱してしまいますよね。
まず理解していただきたいのは、ホットヨガとクレアチニン値上昇を結びつける最大の要因は「脱水症状」にあるということです。
クレアチニンとは、筋肉を動かしたときに出る老廃物で、腎臓が血液をろ過して尿として排出しています。腎臓の機能が落ちると、このクレアチニンを排出しきれずに血液中の数値が上がります。
しかし、ホットヨガのような高温多湿の環境で大量に汗をかくと、体内の水分が失われ、脱水症状に陥りやすくなります。すると、血液中の水分量が減って血液全体が濃縮されます。その結果、病的に腎機能が低下していなくても、クレアチニンの”濃度”が一時的に上昇し、数値として高く見えてしまうのです。これが、多くの場合の「見かけの」カラクリです。
ただし、この脱水症状は、腎臓に流れ込む血液量を減らし、フィルター機能そのものに負担をかける危険なサインでもあります。この状態を繰り返さないためにも、正しい対策を知ることが非常に重要です。
【医師が解説】もう迷わない!ホットヨガ安全実践チェックリスト

「水分補給が大切なのはわかるけど、具体的にどうすれば…」という疑問に、医師の視点からお答えします。このチェックリストは、適切な水分補給によって脱水症状を予防・対策するための具体的なアクションプランです。次のレッスンから早速実践してみてください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 水分補給は「レッスン前」から始まっています。喉が渇いてから飲むのでは遅いのです。
なぜなら、この点は健康意識が高い人ほど見落としがちな失敗ポイントだからです。「汗をかくこと」に集中するあまり、レッスン前の準備を怠り、気づかないうちに脱水状態に陥っているケースが後を絶ちません。この知見が、あなたの安全なホットヨガライフの助けになれば幸いです。
- □ レッスン2時間前:準備をはじめよう
レッスン直前に慌てて水を飲むのではなく、2時間ほど前から準備を始めましょう。500mlのペットボトルの水を目安に、数回に分けて少しずつ飲んで、体を内側から潤しておきます。 - □ レッスン中:こまめな補給を忘れずに
レッスン中は、一度にがぶ飲みすると体に負担がかかります。インストラクターの指示に従い、ポーズの合間などに15分ごとに一口ずつ、こまめに水分を摂ることを意識してください。60分のレッスンで合計1L程度の水分を摂るのが理想的です。 - □ レッスン後:失った分を取り戻そう
レッスン後は、達成感で水分補給を忘れがちですが、ここが最も重要です。汗で失われた水分を補うため、レッスン後も数時間かけてゆっくりと水分を摂りましょう。可能であれば、レッスン前後の体重を測り、汗で減った体重分を目安に水分を補給するのが最も確実です。 - □ 飲み物の選び方:基本は水、汗が多い日は?
基本的には「水」または「常温の麦茶」で十分です。ただし、特に汗を大量にかいた日や、レッスン後にだるさが残る場合は、水分と同時にミネラル(電解質)も失われています。そのような時は、経口補水液や、糖分の少ないスポーツドリンクを水で少し薄めたものを活用するのも効果的です。
それでも注意!ホットヨガを控えるべきケースと見落としがちな「薬」の話
ほとんどの方は、先ほどのチェックリストを実践すれば安全にホットヨガを楽しめます。しかし、「万が一」を避けるため、以下に該当する場合は、ホットヨガを始める前に必ずかかりつけの医師に相談してください。
- 慢性腎臓病(CKD)と診断されている方
- 心臓病や高血圧の治療中の方
- 糖尿病の方
- 妊娠中の方
そして、もう一つ専門家としてお伝えしたい、見落としがちな点が「市販の痛み止め」です。頭痛や生理痛で、ロキソニンSやイブといった非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を服用することがあるかもしれません。実は、脱水状態でNSAIDsを服用すると、腎臓への血流が減少し、急性腎障害(AKI)という危険な状態を引き起こすリスクが相乗的に増大します。 ホットヨガの前後には、ご自身を守るためにも、これらの薬の服用に特に注意してください。
ホットヨガと腎臓に関するFAQ
Q. スポーツドリンクは毎回飲んだほうがいいですか?
A. いいえ、その必要はありません。スポーツドリンクには糖分が多く含まれているものもあり、カロリーの摂りすぎにつながる可能性があります。基本は水で十分です。だるさが強い、足がつりやすいといった症状がある場合に、補助的に利用するのが良いでしょう。
Q. ホットヨガは毎日やっても大丈夫ですか?
A. 体が慣れるまでは、週に2〜3回程度から始めることをお勧めします。毎日行うと、疲労が抜けきらず、気づかないうちに脱水や電解質異常が進んでしまう可能性があります。ご自身の体調とよく相談し、無理のないペースを心がけてください。
Q. eGFRの数値も気にしたほうがいいですか?
A. はい。eGFR(推算糸球体濾過量)は、年齢や性別も考慮して、より正確に腎臓の働きを評価する指標です。クレアチニンの数値と合わせて、このeGFRの数値も基準値内にあるかを確認する習慣をつけると、ご自身の腎臓の状態をより深く理解できます。
まとめ
健康診断のクレアチニン値で不安を抱えていた方へ、この記事の要点をおさらいします。
- ホットヨガ後のクレアチニン値上昇の多くは、脱水による一時的なサインです。
- 最も重要な対策は、レッスン前から始まる計画的な水分補給です。
- ご紹介した「安全実践チェックリスト」を活用すれば、腎臓への負担を大幅に減らすことができます。
正しい知識は、あなたを不安から守る一番の武器です。これからは、ご自身の体のサインを理解し、自信を持ってコンディションを管理しながら、ホットヨガがもたらす素晴らしい効果を心から楽しんでください。
まずはこのチェックリストを実践してみてください。それでも不安が続く場合や、もともと腎臓にご病気がある方は、決して自己判断せず、必ずかかりつけの医師に相談しましょう。
参考文献リスト
- 日本腎臓学会. “腎臓の病気について調べる”. https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/
- 赤羽もりクリニック. “クレアチニンとは?数値が高いときの原因・症状・治療方法を解説”. https://akabanejinzonaika.com/creatinine
- 板橋区役所前徒歩0分の腎臓内科. “急性腎障害(急性腎不全)・慢性腎臓病(CKD)”. https://www.nobu-healthylife-clinic.com/aki/
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