オンライン会議で自分の顔がアップになった瞬間、フェイスラインの産毛が光の加減で気になってしまった…そんな経験はありませんか?「もしかして、クライアントにもこう見えている…?」と、急に不安になった方もいらっしゃるかもしれません。
こんにちは、皮膚科医の木村です。クリニックでは、あなたと同じように、オンラインでの見え方をきっかけに顔脱毛の相談に来られる方が本当に増えました。
顔脱毛には、化粧ノリが良くなったり、肌がトーンアップして見えたりと、素晴らしいメリットがあるのは事実です。しかしその一方で、多くの広告では語られないリスクも存在します。
ですが、ご安心ください。正しい知識さえあれば、そのリスクを適切に管理し、後悔しない選択は必ずできます。
この記事では、美容医療の広告ではあまり触れられない「硬毛化」というリスクに関する医学的データや、国民生活センターに寄せられた事故事例といった客観的な事実に基づき、あなたが心から納得して決断するための情報だけを、皮膚科専門医の立場から正直にお伝えします。
木村 正人 (きむら まさと)
美容皮膚科医 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
専門領域: レーザー治療、美容皮膚科学全般
実績: 10,000件以上のレーザー脱毛症例を担当。硬毛化などのリカバリー治療にも従事。
スタンス: 私は、安易に脱毛を勧めません。私の役目は、あなたが医学的に正しい情報をすべて知った上で、ご自身にとって最善の決断を下すお手伝いをすることです。良い面も、悪い面も、すべて正直にお話しします。
なぜ今、顔脱毛で悩む人が増えているのか?皮膚科医が解説する“3つの背景”
まず知っていただきたいのは、あなたのそのお悩みは、決して特別なものではないということです。最近、特に20代後半の営業職の方から、あなたと全く同じようなご相談を本当によく受けます。その背景には、大きく3つの社会的な変化があると考えています。
- オンライン会議の普及: 画面越しに自分の顔を長時間見つめる機会が増え、これまで気にしていなかった細かな産毛が目につくようになった。
- マスク生活の影響: マスクを外した瞬間のギャップや、マスクによる蒸れで肌トラブルが増え、肌そのものへの関心が高まった。
- SNSでの情報過多: 手軽に情報が手に入るようになった反面、医学的根拠のない情報や、過度にメリットを強調した広告に触れる機会が増え、「何が本当の情報なのか分からない」と混乱してしまう。
こうした状況で、「早くなんとかしなきゃ」と焦ってしまうお気持ちはよく分かります。ですが、そんな時だからこそ、一度立ち止まって正しい知識を得ることが、後悔しないための何よりの近道になるのです。
【本題】顔脱毛の“不都合な真実”。医師が語る硬毛化の全貌

ここからが本題です。顔脱毛を検討する上で、あなたが最も知っておくべきリスクは「硬毛化(こうもうか)」です。
硬毛化とは、医療レーザー脱毛の副作用として、逆に毛が濃く、硬く、太くなってしまう現象のことです。これは決して脅しや稀な噂話ではなく、医学的に確認されているリスクの一つです。
なぜ、毛をなくすためのレーザーで、逆に毛が濃くなることがあるのでしょうか。
そのメカニズムは、レーザーの熱が毛根の組織を破壊するには至らず、逆に中途半端な刺激となって毛母細胞を活性化させてしまうために起こると考えられています。
では、どのくらいの確率で起こるのか。複数の医学論文を総合すると、硬毛化の発生率は0.6%から10%と幅がありますが、一般的には数%程度とされています。そして、特に顔やうなじ、背中といった産毛が多い部位で発生しやすいことが報告されています。
「数%でもあるなら怖い」と感じるかもしれません。その感覚は非常に大切です。重要なのは、「リスクはゼロではない」と正しく認識し、万が一発生した場合でもきちんと対処してくれる医療機関を選ぶことです。この点については、後ほど詳しく解説します。
医療脱毛 vs エステ脱毛、医学的に見るべき唯一の比較軸
硬毛化のリスクについて理解した上で、次に考えるべきは「どこで施術を受けるか」です。ここで登場するのが、「医療レーザー脱毛」と「光脱毛(エステ脱毛)」という二つの選択肢です。
「医療レーザー脱毛」と「光脱毛(エステ脱毛)」の関係性は、単なるサービスの違いではありません。厚生労働省が「レーザー脱毛は医療行為である」と定めているように、法律上の明確な違いがあります。つまり、医療脱毛は「医療」であり、エステ脱毛は「非医療」なのです。
この違いが、安全性と効果に決定的な差を生みます。
事実、国民生活センターには、エステ脱毛による「やけど」や皮膚障害といった消費者トラブルが毎年多数報告されています。これは、医師や看護師といった国家資格を持つ医療従事者以外が、強力なエネルギーを扱う機器を使用することの危険性を示唆しています。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「料金」や「通いやすさ」で選ぶ前に、まず「医療機関であること」を絶対条件にしてください。
なぜなら、多くの人が最初に躓くポイントが、まさにこの選択だからです。エステの「お試し価格」や「手軽さ」は魅力的に見えるかもしれません。しかし、万が一の肌トラブルが起きた際、その場で医学的な診断や治療ができるのは医療機関だけです。あなたの顔は、一生付き合っていく大切なもの。安全性を最優先すべきです。この視点が、あなたが後悔しないための助けになれば幸いです。
両者の違いを客観的に比較するために、以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 医療レーザー脱毛 | 光脱毛(エステ脱毛) |
|---|---|---|
| ① 法的定義 | 医療行為 | 非医療行為(美容サービス) |
| ② 使用機器 | 高出力の医療用レーザー | 低出力の光脱毛機 |
| ③ 効果 | 永久脱毛(毛根組織を破壊) | 減毛・抑毛(一時的なダメージ) |
| ④ リスク | やけど、硬毛化(ただし医療対応可) | やけど、効果なし(医療対応不可) |
| ⑤ 施術者 | 医師・看護師(国家資格保有者) | エステティシャン(資格不要) |
| ⑥ トラブル報告 | 比較的少ない | 国民生活センターへ多数報告あり |
この表が示す通り、安全かつ確実な効果を求めるのであれば、選択肢は自ずと医療機関での脱毛に絞られるのです。
後悔しないクリニック選び、5つの鉄則チェックリスト
「医療機関ならどこでも安心」というわけではないのが、難しいところです。最後に、あなたが広告や価格に惑わされず、“本当に信頼できる”医療機関を見抜くための具体的なチェックリストをお渡しします。
カウンセリングに行く際は、ぜひこのリストを片手に、以下の5点をあなたの目で直接確認してみてください。
- 【リスク説明】硬毛化の可能性と対策を具体的に説明してくれたか?
→「稀にあります」で終わらせず、発生率や原因、万が一起きた場合の治療法(出力変更や針脱毛への切り替えなど)まで丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。 - 【医師の診察】契約前のカウンセリングだけでなく、施術前に毎回医師の診察があるか?
→毎回、医師が肌の状態をチェックしてくれる体制は、安全管理への意識の高さを示します。 - 【テスト照射】契約前に、痛みや肌の反応を確認できるテスト照射は可能か?
→あなたの肌質に合うかを事前に確認させてくれるのは、誠実なクリニックの証です。 - 【料金体系】総額費用は明確か?追加料金(麻酔代、薬代など)の説明はあったか?
→「月々〇〇円」だけでなく、最終的にいくらかかるのかを明確に提示してくれるかを確認しましょう。 - 【質問への態度】あなたの細かい質問や不安に対して、急かさず、誠実に答えてくれたか?
→何よりも大切なのが、この点です。あなたが一人の患者として、尊重されているかを感じ取ってください。
このリストで一つでも「いいえ」があれば、その場での契約は踏みとどまるべきです。
顔脱毛に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 顔脱毛は、どのくらい痛いですか?
A1. 痛みの感じ方には個人差がありますが、「輪ゴムで軽く弾かれる程度」と表現されることが多いです。特に、皮膚が薄い口周りや額は痛みを感じやすい傾向があります。多くの医療機関では、痛みを和らげるために冷却ガスや麻酔クリームを使用できますので、不安な方はカウンセリングで相談してください。
Q2. 全部で何回くらい通えば終わりますか?
A2. 毛周期に合わせて施術を行うため、一般的には1.5ヶ月〜2ヶ月に1回のペースで、合計5〜8回程度の施術が必要になることが多いです。産毛はメラニン色素が薄いため、他の部位より回数がかかる傾向があります。
Q3. ニキビや肌荒れがあっても施術はできますか?
A3. 炎症が起きているニキビや、肌荒れがひどい部分は避けてレーザーを照射します。肌の状態は日々変わるため、施術前に必ず医師が診察し、その日の肌状態に合わせて施術可能かを判断するのが、安全な医療脱毛の基本です。
まとめ:正しい知識が、あなたを後悔から守る
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
顔脱毛で後悔しないために最も重要なことは、硬毛化というリスクの存在を正直に説明し、万が一の際も医学的にきちんと対処できる「医療機関」を、あなた自身の目で見極めることです。
オンライン会議で感じた、あの小さな不安。それを解消するための選択肢は、あなたの手の中にあります。広告の甘い言葉に流される必要はありません。今日手に入れた正しい知識は、あなたを不要なリスクから守り、自信を持って決断するための強力な武器になるはずです。
さあ、まずは第一歩として、今日お伝えしたチェックリストを持って、気になるクリニックの「カウンセリング」に行ってみることから始めてみませんか。
目的は契約ではありません。あなたのその真剣な疑問に、医師が誠実に答えてくれるかどうか。それを確かめに行くだけで、大きな前進です。
【参考文献リスト】
- 独立行政法人国民生活センター. (2017). なくならない脱毛施術による危害. https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170511_1.pdf
- 厚生労働省. 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6731&dataType=1&pageNo=1
- Laser hair removal: a review. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23332016/


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